ふうこのばけつ Archives

テキストサイト『ふうこのばけつ』のアーカイブ。


エントリー

ヴァン・ダイン『グリーン家殺人事件』

グリーン家殺人事件

まさに東奔西走の夏期休暇中に入手&読了。広島くんだりまで行って古本屋漁りなんぞしても、と思ってましたが、前から興味があったポー『モルグ街の殺人』等古典ミステリの名作を手に入れたりと、それなりに収穫。こんなことでもないと読みませんからねぇ。

さて、本作もそんな古典ミステリの一で、探偵役は金持ちのボンで日々美術や文学といった芸術の研究に勤しむヒマ人ファイロ・ヴァンス、ワトソン役は古い友人でヴァンスの財産管理人も務めるヴァン・ダイン。初登場作品『ベンスン殺人事件』から数えて3作目になります。

こういった設定を持つヒーローの常、ヴァンスはひねくれ者で抽象的な発言が多く、頭の固いお役人どもの地雷をステップも軽く踏み荒らしつつ華麗な推理を展開します。文体も素性を隠して探偵小説を書くかたわら高名な美術評論家でもあったという作者の嗜好を反映してか、(ふうこからすると)無駄にラテン語やらフランス語やら作者註やらがちりばめられたペダンティックな仕上がりです。

ただ、以前『ベンスン殺人事件』を読んだ時はなーんか散々あちこち連れ回されて結局そのオチかい!とか思ったものですが、本作は本筋とは関係ない註にも気をそがれることなく、適度な緊張感で最後まで読めました。何が違うのかは全然分からないんですが(^^;、ヴァン・ダインというと『グリーン家』『僧正殺人事件』あたりがすぐ出てくるということからしても、名前が残る作品は何かのさじ加減が違うということなのでしょう。

…じゃ、次の『僧正殺人事件』を読んだらヴァン・ダインは打ちとめにしとこ。