恩田陸『ロミオとロミオは永遠に』
- 2002.11.24 Sunday, 21:31
- [今日の読書]
やる気のないコメントはとっとと下げて次行ってみよう。
BBSの方では何のかんの言っていたのですが、横溝が思ったほどこなかったので割合早く手を出せました。時は21世紀後半、荒廃した地球に残り汚染物の処理をする役目を押しつけられた日本。がんじがらめに管理された世界の中で、卒業総代に与えられる特権を目指して『大東京学園』に入学した少年たちがそこからの「脱走」を企てるお話。
さて、再三申し上げておりますが、ふうこの読書はミステリ一辺倒、SF嫌いのファンタジー敬遠派。なのに、本書は『ハヤカワSFシリーズ Jコレクション』ですよ。しかも、皆様も書店等でご覧頂けたらと思うのですが、表紙イラスト。クラシカルな SF 小説の表紙をきっちり踏襲する構図。油絵風のタッチ、学生服にUFO…書店で見つけた瞬間マジで引きました。
ま、どっちにしろ筆者は初期のミステリとホラーの中間をいく作風から、よりSF、よりファンタジックな方にシフトしているので、いい加減追っかけるのをやめればいいのかもしれないですが、読み出すと面白いんだ、これが(笑) 久しぶりに徹夜一気読みしてしまいました。
テーマが「過ぎたる20世紀へのオマージュ」ということで、文中には「前世紀の遺物」として作者がこの世に産まれて生きた1970年代からの消費文化のキーワードがふんだんにちりばめられ、時には郷愁を、時には自嘲をこめて描かれています。惑乱と狂騒の20世紀。何もかにもが巨大で、キラキラしていて、芳醇で、ぐずぐずに腐った世紀末の鼓動。
が、本当に面白かったのはそういう表面のつかみの良さではなく、いつの時代も変わらない思春期の少年たちを取り巻く現実、そしてその現実から逃れ「まだ見ぬもの」に向かって疾走する少年たちの姿でした。叩きつけられ、ぼろぼろになって俯いたその瞳に光がもう一度宿る、その瞬間がカタルシス。走れ、少年。どこまでも。
てなわけで、結局本作も恩田節炸裂の良品でした。でも、もうオカマはいいよ、オカマは(笑)