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恩田陸『上と外』(全6巻)

上と外〈1〉素晴らしき休日

2ヶ月おき全5巻(後に6巻に変更)の文庫書き下ろし小説がこのほど完結。いやー。面白かった。アサマシリンクつきの書影は第1巻です。

夏休みに南米のG国で考古学の研究をしている賢(けん)に会いに行った賢の別れた妻、千鶴子と練(れん)、千華子の兄妹。ところが滞在中に謎のクーデターが発生した上に、練と千華子は二人きりで熱帯雨林の中に放り出されてしまった! 混乱の中、息子たちを探す賢と千鶴子、熱帯雨林から何とか生き延びようと苦心する練と千華子の冒険を描いたお話。

全5巻の予定がいつの間にか全6巻になっていて、作者の産みの苦しみが窺えますが、長くしたことで却っていつもの掘り下げの浅い部分がなくなり、結果としては最高の出来になったのではないでしょうか。そもそも偶然とはいえ完結編の出版タイミングが最高! まとめ読みの人はちょーチャンス!読書感想文書かないといけない人にもちょーお勧め!(笑)この夏青少年に読ませたい本 No.1 です。

とはいえ冷静に見ると相変わらず「14 歳のはずなのに高校生並の知力と体力の練」「一人で女の泥臭さ大爆発の千鶴子」「昔気質の金型職人だが実は世界を股にかける技術力の持ち主のじいちゃん」といった「恩田設定」も健在ですが、今回はそれもまた本作の読みやすさに拍車をかけている感じでいい効果が出ているのではないでしょうか。(多分じじいは実在の職人さんがモデルではないかと思うのだけど。)このつかみの良さは、いずれ映画化の話も出るんじゃないかな。

しかし…今までの恩田作品の物足りない部分が字数制限からくるだとしたら…そりゃ『六番目の小夜子』の時に貰った素人くさいの誹りも免れまい。