中島河太郎編『君らの狂気で死を孕ませよ』
- 2001.05.19 Saturday, 18:41
- [今日の読書]
はい、久しぶりに読書です。(東野圭吾を読んだのはだいぶ前。)今回は駅の売店でゲット。しばらく電車の中では HTML/Web デザインの実用書ばっかり見ていたので、今は創作系への揺り戻し期間のようです。
さて、本書は著名な探偵小説評論家、中島河太郎が戦前~戦後しばらく刊行されていた読物雑誌『新青年』より傑作推理短編を集めた作品集ですが…
まずタイトルが振るっています。どう考えてもおっさんの集まりである集団に向かって二人称君ら
。戦前生まれのセンスです。クラシカルですてき。
収録作家もすごいです。海野十三、江戸川乱歩、木々高太郎、甲賀三郎、角田喜久雄、平林初之輔、水上呂理、山本禾太郎。……何がすごいって、難読筆名続出なところが(オイ)。
内容もキてます。皆さんは他を知らなくとも江戸川乱歩は読んだことあるんじゃないでしょうか。できれば『少年探偵団』じゃなくて角川文庫の黒いカバーのやつを思い出してほしい。そう、どの作品も基本的に物語の中心人物は心が弱く、倒錯趣味があり、職業は大体学者か作家なのです。
トリックもなかなか無茶です。本当にあるのかどうか分からないような奇病にかかった状態に見える架空の薬とか、理屈から言うとバナナで釘は打てないことになる死体処分方法とか。そして最大のお約束、逃げ切れなくなった犯人は自殺するべし。
いろいろ野次ってみましたが(^^;、こういう作品集は基本的に当時の「お約束」ムードを楽しむのが1番だと思います。自分の中にフロイト支持とかオカルト好みが存在することを否めない方などは特にお勧め。少々斜に構えて読むにしても、恐らく太古の昔から日本人の心の底に根付いていたと思われるこういう嗜好が初めて「文化」として育った頃の雰囲気が味わえて、ちょっとした当時の有閑ブルジョア気分です。
かくいうふうこは、朝ご飯抜きで電車に乗って読んでたら頭がむずむずかゆくなっていやんなりました。痛そうなのキライ…。