乙一『暗いところで待ち合わせ』
- 2003.02.20 Thursday, 21:16
- [今日の読書]
いやぁ。今年の初「読書」です。
とは言いつつ、今年に入って全然読んでなかったわけではなくて、実はあれだけ文句言ってた横溝を読んでたりします。最後これだけ、と思って『獄門島』読んだ後、自分なりの読み方を覚えたらしい。年明けからこっち自分の読書傾向にはまるものが見つけられなくて、電車で読むネタが不足中ってのもある。だから眼精疲労治らないんだよな(X_X)
閑話休題。今回の読書は、お友達のサイトに載っていた紹介文を読んだのが始まりです。
この作者、17歳の時に第6回「ジャンプ小説・ノンフィクション大賞」なるものを受賞したんだそうで、多分ご紹介がなければふうこ絶対に手に取ってなかったタイプの経歴をお持ちです。現にこれを探している時にたまたま(というか昨年のベストミステリ系で『GOTH リストカット事件』が軒並み上位入賞した直後だ)渋谷 TSUTAYA で「乙一フェア」なるものをやっていて、本作以外の乙一作品がかなりの数並んでいたのですが、結局誰も連れて帰らなかったという。ノらない時は仕方がない。
で、本作は、事故で視力を失った一人暮らしの若い女性の家に殺人事件の容疑者として追われる青年がこっそりと入り込み、奇妙な同居生活が…というサスペンス寄りのもの。この内容にオードリー・ヘップバーン主演の映画を思わせるタイトルが粋です。
ストーリーは二人の今までの境遇、現在の気持ちを代わる代わる語る形で進んでいきますが、この二人、どちらも(女性は視力を失う以前から)内に閉じこもりがちなところがあり、本当は他人と触れ合いをもちたいと奥底で願う二人の心が徐々に近づいていくさまが透明感のある文章で描かれています。ラストには軽い(というか二人の交流にしみじみと感動できるので大筋に関係なく思える(^^;)どんでん返しもあり、今更横溝を読み進んでいる身としては久しぶりにさわやかな読後感でした。
惜しむらくは、男の潜伏の目的が語られ始めるあたりから、いささか唐突に男の性格づけが別方向へ向いてしまうところ。だって、前半だけ読んでるとビビって隠れてるだけとしか思わないぞ…